桃色2020

2019/ 11/ 18 (月)


道路際に、誰かが立っている? と思ったら、

シューズだけだった。

 

 どうしてシューズだけ歩道に残されているんだろう。誰かの自転車の荷台からでも落ちてしまい、そのまま忘れられていたものを、通りすがりの別の誰かが並べたんだろうか。いつまで持ち主を待つんだろう。行儀よく歩道際に立って、渡れない通りをじっと眺めている。

 

 表紙がピンク色の手帳を買った。ここ数年はMARK’SのEDITを使っていて、濃いブルーだったりターコイズだったりと、だいたい青系、青系じゃないならオレンジ……という選び方をしていたけれど、今回は少しくすんだローズ系のピンクにした。ピンク色を選ぶようになったら立派なおばさんだと誰かが言っていたようないないような……? ともかく、私に足らない色、という気がしたから来年はピンク。真面目な青系ではなく、ほわほわと柔らかであったかい色にしたかった。以前も、ほぼ日手帳で普段は選ばないようなポップな柄のカバーを選んだ年があったが、そういう年回りなのかもしれない。

 

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駅を降りたら2分で登山

2019/ 11/ 15 (金)

 お天気が良かったので富士山に登った。

 ……といっても、品川富士のこと。

 京急の新馬場(しんばんば)駅を降りてすぐ、龍の巻き付いた独特な鳥居のある、品川神社の富士塚だ。

 急な岩の階段を登れば1分で頂上。そこは半径4,5メートル程の円形の平らな広場になっていて、眺めがよい。幸い、私ひとりだけだった。

 手前には、乗ってきた京急線が走っている。

 こんなによく見えるくらいだから、電車の中からも、頂上にいる人が見える。もちろん、顔までは分からず「人がいるなー」くらいではあるけれども、今も、電車の中の誰かがこちらを見ているかもしれない。そう思ったら手を振りたくなった。

 

 もちろん、振らない。ひとりだとそんな無邪気なふりもできない。

 あ……そうか、「ふり」なんだな。一緒に行って私が電車に手を振ったりしたら、それは「無邪気なふり」ですよ。

 龍の巻き付いた鳥居。片側が昇り龍で、もう片方が降り龍になっている。表から両方の写真も撮ったけれど、人が写り込んでいたのでボツ。相変わらず写真をじっくり撮ることができない。ちゃちゃっと撮ってそそくさと立ち去る。

 

 のんびり裏道など通るつもりでいたのに、少しものんびりできず、国道沿いを早足で品川駅に至った。とにかく人が多い。いつだって人は多いけれど、なんだか今日はそれがチクチクがさがさしていやだった。神社も街も駅の構内も電車の中もごちゃごちゃ。チクチクがさがさゴワゴワぞわざわ。私こそ邪魔者だったのかもしれないけれど。

 

 トータル8800歩。

 

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となり駅まで

2019/ 11/ 13 (水)

 

 今まさに電車に乗るというタイミングで、持っていたスマホが震えた。乗ってから着信を見ると、これから行く仕事が延期という通知だった。「既に移動中でしたら大変に申し訳ないのですが」というメールに「大丈夫です!」と嘘を返して、さあ、どうしようかと考える間もなく電車は次の駅に近づく。いいお天気だが、このままぶらぶらするには荷物が多すぎる。バッグは重いし、掲示物を入れた筒状のケースは軽いとはいえ嵩張る。とりあえずは家に帰ることにしようと、「となり駅」で降車。ちょうど反対側に入ってきた電車に乗った。

 

 さて、あっという間に振り出しに戻り、何気なく改札を出ようとスマホをかざすと、アラートが鳴る。ああ、そうか、どこの改札も出ずに戻って来たからだと気づいて駅員のいる改札に行き、「となり駅まで行って戻って来たのですが」と申告。スマホを渡すと駅員はあちら側の機械にかざし、「それでは、となり駅までの往復運賃をいただきますね」と言って操作した。

 

 最低乗車賃の往復分を支払ったことになる。もしもメールを受け取ったのが10駅先まで行ってからだったら、時間も運賃も、もっと無駄になっていたところだ。

 

 ところで、「となり駅まで行って……」というのは自己申告である。もし10駅行っても「となり駅」と嘘をついたら、タイムスタンプを見ておかしいと分かるのだろうか。それとも、改札を通って駅ナカで買い物をしたり喫茶店に入ればそれなりの時間が過ぎるのだから、「となり駅」どころか「入場しただけ」という嘘もまかり通ってしまうんだろうか? まあ、そんな嘘がつけるようではお天道様に顔向けができないってものだが。

 

 さて、あっという間に振り出しに戻り、何気なく改札を出ようとスマホをかざすと、アラートが鳴る。ああ、そうか、どこにも行かずに戻って来たからだと気づいて駅員のいる改札に行き、「となり駅まで行って戻って来たのですが」と申告。スマホを渡すと駅員があちら側の機械にかざし、「となり駅ですか? おかしいですね。あなたがこの改札を通ってからもう、5時間経っていますよ」と言う。

 

 そんなはずはないと顔を上げると駅員の向こうに見える壁の時計は確かに夕刻を指している。そういえば改札を通る人たちは学校や仕事帰りの様子だ。私が電車に乗ったのはまだお昼前だったはず。メールを見て、となり駅で降りて戻ってきたはず……。

 

「本当はどちらまで?」
 そう尋ねる駅員の左目が金色に光る。

 

 なぜだ。5時間の記憶がない。となり駅ではなく、片道2時間半乗ったとするなら、私はどこまで行ったのか。その駅でどんな任務をこなして戻って来たのか。いや、「コト」は車内で行われ、適当なところで戻って来ただけかもしれない。

 

「失礼ですが、そのお荷物は?」
肩に掛けていた筒状のケースに駅員の触手が伸びる。B1サイズの掲示物を入れていただけのはずのケースが、ずしりと重い。

 

noteの「#一駅ぶんのおどろき」という企画に投稿したものです。
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