いいえ!

2018/02/23(金)

スーパーの化粧品売り場でフェイスシートを買った。

化粧水がたっぷりと染み込んだ、シート状のマスク(パック)だ。

レジで会計をすると、「お客様、いつもこの商品をお使いですか?」と店員が言った。特に化粧品担当というわけではない、おそらくスーパーのパートさんだ。

間髪を入れず、
「いいえ!」と言ってしまった私。
何もいきなり否定しなくたっていいのにと、自分で自分に苦笑いだ。

フェイスシートは毎晩使っている。ただ、今日買ったのは、いつも使っている商品ではない。求めていたものがなかったので、試しに買ってみたものだ。だから、「いつもこの商品をお使いですか?」の答えは「いいえ」で正解なのだが、「いいえ!」では取りつく島もないだろう。もっとこう、それならそれで言いようもあるはずだ。オトナなのだから。でも、そこで事情だとかなんだとか、個人的な説明をするスイッチが入らなかったのよね……。

店員さんはめげず、先の質問をした理由を明かすかのように、「最近、フェイスマスクを買うお客様が多いんですよねぇ」と、続けた。
私は、「ああ、そうなんですか……」と間の抜けた返事。

なんとなく心が閉じていて、必要以上の会話ができない。

まあ、そんな日もあります。多々あります。

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好奇心と親切心

2018/02/21(水)

電車に乗り、空いている席を見つけたが、バッグが置いてあって充分なスペースがなかった。幸いその女性が気づいて荷物を自分の方へ引き寄せてくれたので、会釈をして座った。そこそこに混んでいる電車で、他に空いている席はない。その状態でバッグを座席に置いたままでいた様子からして、旅行者だろうなと思った。


どこの国の人かわからないが、黒髪の美しい若い女性だった。その隣りには連れらしい漆黒の肌の男性。そして端っこには黒いスーツの恰幅のいい女性がいて、その人はコーディネーターらしく、書類を見ながら「もしよかったらここに行って、その後はここで……」などと二人に提案している。3人とも、癖のない英語を話していた。


聞き取りやすいからと言って私に全てが理解できるわけもないのだが、会話の中に「池袋」とか「銀座」が出て来る。隣りの美人さんはスマホの路線図を広げて男性に見せ、ブルーがどうとか、グリーンがどうとかしきりに言っている。路線の色分けのことだろう。男性は知らん顔だが、コーディネーターはそわそわし始める。時々窓の外を見る。やがて立ち上がりドアの前に行くと、その上に掲げられている路線図を見上げ、持っている書類と比べて首を傾げた。


その電車はブルーの京浜東北線だった。もう品川も過ぎて神奈川方面に向かっている。いったい3人はどこへ行きたいのだろう。もしかしてホーム反対側の山手線(グリーン)と間違えて乗ってしまったのではないか?


何駅に行きたいのか聞いてみようか……と、記憶の底の英語をほじくってみる私。いやいや、訊かれたら頑張って答えるけど、こちらから口を出して、適切な乗り換え方を説明する自信はない。これがもし日本人相手だったら、私はどうするだろう? 訊かれてもいないのに口を挟むのは、盗み聞きしていたみたいじゃないか? 調べるのはアテンドしている人の仕事ではないだろうか?


……と、迷うのもそんなに長い間ではなかった。立っていたコーディネーターの女性が、側にいた若い男の子に「イングリッシュオーケー?」と声をかけた。そうそう、聞いてみたらいいのよ。書類と路線図を交互に指差して「どこ?」というように目で尋ねると、男の子は「ああー、ネクスト。あ、違う。ネクストネクスト」と答えた。スーツの女性はホッとしたように礼を言い、それを見た私の隣りの女性もスマホを閉じた。


これで一件落着だ。


スーツ女性が合図して、蒲田で女性たちは立ち上がった。そして美人がハッと振り返る。私のお尻の下に少し、彼女のコートの裾が挟まってしまっていたらしい。頭の中が英語だった私は腰を浮かしながら思わず「ソーリー」と言ってしまう。わ、カッコワルイと思ったが後の祭りだ。彼女はちょっと驚いたように眉を上げて、すぐにキュッとやさしい笑顔を見せてくれた。まあ、その魅力的なこと! 「あら、聞いていたのね?」と思ったかしら。とにかく、3人は無事に目的の駅に降りて行ったのである。

 

さて、そこで新たな疑問。
蒲田で降りて、どこに行くんだろう?


この数分間、私の中に渦巻いていたのは、親切心じゃなくて好奇心だったのかもしれない。

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伸びない羽

2018/02/19(月)

娘の旅行と夫の出張が重なった。そして今日の私には何の用事もない。

よーし、自由だ! 非日常だ!

好きなことをするぞー!

 

……と、何年か前の、特に子育て中の私ならば相当にウキウキするはずの状況。でもあの頃のように、好きなだけ夜更かしをしてネットしたり、書き物に没頭したり、映画を何本も観たりとかには、それほど魅力を感じない。それどころか、とりたてて自由に伸び伸びとやりたいことが思いつかない。

 

どこかに出かけようにも、風邪やインフルエンザをもらいたくないから人混みはいやだし、同じ理由で公共の乗り物にもなるべく乗りたくない。それよりも家の中の大々的な片付けをしようかな……なんて、それじゃいつもの主婦の一日じゃん。

 

お天気もまずまずだから、とにかくとにかく、外に出ることにした。

犬の散歩をしてから、自分の散歩だ。

 

 

寒すぎず、暖かすぎずの散歩日和だった。

やはり、黙々と歩くのはいい。脳内デフラグ。そして心地よい疲れ。

 

そうだ、今日は早く寝よう。

それこそが、今日こそ私が自由にしたい、唯一のことかもしれない。

 

 うれしさも寝るくらいなりおらが春(いっちゃ)