なくても困らないのに

2019/ 09/ 12 (木)

 車を買い替えた。まだ助手席に乗るだけで、運転はしていない。いつもそうなのだが、新しい車は怖い。運転しないと慣れないのは分かっているけれど、いつまでも前の車の方がよかったと、拗ねた気持ちになったりする。「慣れ」=「愛着」。今頃どこでどうしているんだろう。もう、戻れないのね。

 

 一番最近別れた車は、スポーツタイプのステーションワゴンだった。その車を買うときには、荷台に折りたたみ自転車を2台積んでおいて、でかけた先で軽いサイクリングをしようと考えていた。実際にカタログを求め、どの自転車にしようかと迷うこともした。でも結局は、買わなかった。折りたたみ自転車を買っていたとしても、一年に一度でもそういうお出かけをしたかどうか、怪しい。

 

 新しいものを買うときには「ああ、これがあったらあれもできるしこれもできる」と夢が膨らむが、もともとの生活の中でしていなかったことや、特に求めていなかったことなどは、結局「できるけどしない」というパターンになりがちだ。家電にしてもそう。リサイクルに出す段階になって、使わなかった機能に気づいたりする。

 

 そんなわけで今度の車は、最初から自転車が積めるような仕様ではない。その代わりにと言ってはなんだけど、サンルーフがある。これも、あってもなくてもいいといえばいいのだ。私が免許を取って最初に自分で買った車もサンルーフ付きだったが、それがあってよかったことといえば、風が抜けやすく、熱い車内が早く冷えること……くらいだった気がする。明るさや開放感などは気分の問題だ。

 

 あとは、走っている車内から空の写真が撮れるとか? 

にほんブログ村 小説ブログ エッセイ・随筆へ
(にほんブログ村にささやかに参加しています)

ブルドッグのおじさん

2019/ 09/ 11 (水)

重そうな太いリードを両手で持ち、ブルドッグの散歩をしているおじさんを時々見かけた。スマートなおじさんだが顔は愛犬と似ていて、密かにブルドッグのおじさんと呼んでいた。

おじさんとブルドッグはいつもゆっくりと歩いていた。そのうちに、犬用のヘビーカーに乗せて散歩をしている姿を見るようになった。馴染みの電信柱のそばで、重そうにカートから抱きかかえて愛犬を下ろす姿も見たことがあった。

今日、バスに乗って発車を待っていたら、後方から来た人がすみませんと手を伸ばして、両替機にお金を入れた。目の前に現れた横顔は、あのブルドッグのおじさんだった。ブルドッグを連れていないおじさんを見るのは初めてだった。

そういえば、おじさんとブルドッグに出会わなくなってから随分経つ。おじさんのブルドッグはもう、いないのかもしれない……。おじさんの背中のリュックを見ながらそう考えたら、胸がざわざわとして、悲しみが込み上げて来た。

挨拶さえしたこともない見知らぬおばさんが、後ろで勝手におじさんの寂しさを想像して泣きそうになってるなんて、本人は思いもしないだろうなーと、そう思ったら、今度は少しおかしくなって、ちょうどよく中和したところでバスは走り出す。

鼻が悪いのか、おじさんはときどきグハッと鼻を鳴らした。
にほんブログ村 小説ブログ エッセイ・随筆へ
(にほんブログ村にささやかに参加しています)

久しぶりに寝床で書いた

2019/ 09/ 11 (水)

 フォークナーの「八月の光」を読み終えたので、松家仁之の「優雅なのかどうか、わからない」を読み始めた。この方の文体の静かさが好きだ。48歳の男性が離婚を機に井の頭公園近くの古い家を買い、好みの家に作り替えながら一人暮らしをする……という話。庭には人懐っこい猫がやってくる。……と、ここまでは私好みだった。

 

 ところがある日、蕎麦屋でかつての不倫相手と再会する。それも、1年前に別れたばかりの相手であり、偶然にも新居の近くに住んでいるという設定。後日、彼女から家を見せてほしいというメールが来て、彼は承諾する。……ん、そうか。なんとなーく先々起こることが見えてきて、なんとなーく続きを読みたくない気がしてきた。

 

 私が読みたかったのは、50も近くなって離婚して、井の頭公園近くの古い一軒家を買い、コツコツとこだわりのある改装をしながらひとりで暮らす男性の、なんてことない日常の話だったのかもしれない。ふらっと散歩をして何かを見つけたり、少しずつ町に馴染んで行きつけの店ができたり、猫が可愛かったり、雨が好きだったり、リフォームが思うようにいかなかったり料理で失敗をしたり、縁側でタバコを吸いながら月を眺めたり、自由気ままで、ときどき少し寂しくて……というような。

 

 どこかに、そういうブログはないかしら。

 

「なんてことない日常」というのは、書けそうで書けない。今日はこんなことがあってね……と書いたら、毎日なにかしら書けるはずなのにね。

にほんブログ村 小説ブログ エッセイ・随筆へ
(にほんブログ村にささやかに参加しています)