聞こえたら手を挙げて

2019/ 10/ 18 (金)

 お天気があまりよくない。秋を通り越してもう冬のようだ。

 

 近くの中学校脇の歩道が、散った金木犀の花でオレンジ色に染まるのを今年はまだ見ていない。そんなことを考えながら歩いていると、鋭く「ピィーーーッ」とホイッスルの音が響いて、「この音が聞こえたら左手をまっすぐ挙げてください!」という男性の声がした。え? 聞こえましたけど……と思って校内の方を見ると、制服姿の15人くらいの男子生徒が、数メートルおきに遠くまで一列に並んでいる。皆、後ろ向きだ。

 

「いいですかー?!」と言って、先生らしき人が改めて笛を吹くと、手前の生徒からどんどん順番に手が挙がっていった。見ていた女生徒たちは「おもしろーい」と声をあげ、それから、次は女子が並ぶ番なのだろうか、列を作りに走って行った。

 

 音の伝わる速さを眼で見る、アナログな実験かな?

 1秒に約340メートル。

 

 そういえば、中学生くらいの時は、そんなふうに教室外でやる授業が好きだった。教科書を持って音楽室や理科室へ移動したり、外に行くためにぞろぞろと昇降口へ向かったりするだけでわくわくした。単純に気分が変わるとか、自由に動けて好きな子がよく見える位置に行けるとか、まあ、それくらいの理由だったんだろうけれど。

 

 そんなことを思い出しながら駅に向かう。体育館からは、キュッキュッとシューズと床の擦れる音が聞こえてくる。

 

 あなたの声はあとどれくらいしたら耳に届くんだろう。手を挙げる準備はできている。

 

にほんブログ村 小説ブログ エッセイ・随筆へ
(にほんブログ村にささやかに参加しています)

この記事のトラックバックURL
トラックバック