お弁当箱の再起動

2020/ 06/ 25 (木)

 月曜日、突然ネットが繋がらなくなった。在宅勤務中の夫と娘は会社のPocket WiFiを使って仕事を続け、問題解決は私の担当になった。

 

< これは、屋内にある据え付けのLANケーブル分配器の存在を知らなかった人(私だ)の話である >

 

 いつものようにWi-Fiルーターを再起動。それで簡単に直るだろうと思ったが駄目で、試しに壁のLANポートから直接PCに繋いでみたけれど駄目。別のLANケーブルにしても駄目。となれば、私には次に打つ手が分からない。仕方なくサポートに電話を(光電話は使えないのでスマホから)かけてみた。

 

 応対してくれた人はのんびりした口調で、「いつからですか? これをやってみましたか? これはどうですか?」とひとつひとつ質問してくる。そういうの全部やったけど繋がらないって最初から言ってるのになぁとジリジリする。(言わないけど)

 

 そんな一通りの問答の後、「ではですね、おそらく玄関の下駄箱の上の方にお弁当箱のようなものが置いてあると思うのですが、探していただけますか?」と言われた。

 

 ん? お弁当箱? 下駄箱を開けてみたが、上部にはいつもよく見ている配電盤がどーんとあるだけだ。
「そこになければ、お風呂場の天井の上とかですが…」
「お風呂場ですか?」
「お風呂場じゃなければクローゼットの中とか、どこかに必ずお弁当箱があります」

 

 いやいや、目につくところにあれば知っているはずだ。ということはお風呂場かと、初めてお風呂場の天井の上を見たよ。サスペンスドラマや小説で、天井の一部を持ち上げてみる場面があったのを思い出してちょっとワクワク。しかし、いろいろ配線はあったが、お弁当箱はないし、LANケーブルのようなものも見えない。もちろん怪しい札束も古い日記帳もなかった。

 

「えっと、お弁当箱って、どのくらいの大きさですか?」

「横が30センチくらいで……」 (って、それじゃ仕出し弁当サイズだ。 そんなものがあるなら分かるはず)

「ないと思います」

「絶対にあります。もう一度、玄関の近くを見ていただけますか?」
 そう言われ、再び下駄箱を開けて上を見る。配電盤がドーン。


「ないです」
「いえ、必ずあります。なかったらそもそもネットが来てません」

 

 ええー?、10年以上住んでて見たことないものなんてありえる?!
 そう思いながら隣りにある、季節モノを入れているもうひとつの下駄箱を開けてみたら、あら、カバーされた白い箱状のものが上部の壁に張り付けられているではないの。

 

 これがお弁当箱なの? 縦にしてたらご飯もおかずも下に偏っちゃうじゃん! と恐る恐る蓋を開けてみたら、中にLANケーブルが8本も並んで、洋室1−1、1−2などなど部屋番号が振ってある。おお、これだこれだ。はじめましてハブさん!

 

 あまり使わない場所だし背も低いので、壁に同化している箱状の存在を、私は今まで全く目に入れていなかったらしい。「ありましたありました!」と思わず大きな声が出た。サポートの人は、これでやっと先に進めるとホッとしたに違いない。「やれやれ」だろう。お弁当箱を再起動して、ネットは目出度く復旧した。

 

 それにしても「お弁当箱」という表現はどうなんだろう。私が思い浮かべた「お弁当箱」はもっと小さかったし、「置いてある」と言われれば水平に置いてあると思ったよ。だって、お弁当箱だからねぇ……。

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